小説くずれの山

小説崩れを置いておく場所。思いつきで書いているので、ほんの少しのテーマ箱みたいなものです。よければコメントください。

最悪の目覚め

最悪の目覚めだった。

昨晩は美味しい夕飯を食べて、新しく買った身体にいいらしい枕で快適な眠りについたというのに、悪夢を見たのだ。

夢の中で死んだのだ。

 

その夢の中で、私は気付くと、どこかで見たことがあるようで、おそらく実在しないことが何となく察せるような、不思議な高所で数十メートル下方を眺めていた。

――ここから落下したら助からないんだろうな。

ふと、そんなことを考えたような気がするけれど、夢の中での思考は、起きてからはイマイチ上手く思い出せないものだ。

そんな思考を反映したのか、次の瞬間、私は頭から落下した。

視界に映る地面がどんどん迫ってきて、いよいよ顔が地面に衝突するというタイミングで、目が覚めた。

 

少し前に何かの本で読んだ話だが、夢の中での自分の死を迎えると、現実の肉体にも同じような影響を与えることもあるそうだ。

まったく、なんて夢だ。

なんて最悪な目覚めなんだ。

 

寝付いたときにどんな姿勢で横になっていたのか、出来るだけ思い出して近い体勢を取ろうと努めながら、私はもう一度目を閉じた。

もう少しで、死ねていたかもしれないというのに。