リスキーゲーム
何かに決着をつけるということは、得てしてリスキーなものなのだろう。勝つためには負けるリスクを負わなくてはならない。
例えばそれは、歴史のワンシーンで。
何百年前かは知らないが、親の仇を討つために剣に生涯を捧げた彼がいた。彼はいよいよ仇との真剣勝負に至ったが、結果として敗北した。仇はあまりにも強く、今では教科書の隅っこに名前を載せている。
例えばそれは、青春のワンシーンで。
走ることに青春を捧げた彼女がいた。彼女は、プロへの入口として全力を注いだあの試合で、脚がもつれて転倒してしまった。きっと熱意が空回りしてしまったのだろう。その際の負傷は、生活には支障をきたさないものの、彼女に陸上を続けることを許さなかった。
例えばそれは、生命のワンシーンで。
病室の窓から見える桜が大好きな、肌が白いあの少女も同じだ。華々しい「桜」が青々とした「木」に姿を変える頃、あの子は病との最後の闘いに臨んだ。その両親がありとあらゆる犠牲を払って勝ち取ったその手術は、ウィキペディアに載っている通りの確率に従って失敗した。
みんな決着をつけようとして、ひたむきに勝ちを願って、それでも敗北の可能性は残酷に彼らに微笑んだのだ。誰だって、何だって、決着を望む者には敗れるリスクを負わせるというのが、この世界の道理なのだ。
そしてどうやら、それは恋愛というものにおいても例外ではないらしい。
紫陽花がそのシーズンで初めての色を見せたあの日、純情な彼は片想いに決着をつけた。
誠実な言葉を精一杯に紡いで、震える声を握った拳の痛みで抑え込んで、必死に伝えた。
審判を務めるのは長い黒髪が美しい部活の先輩だ。困ったように少し微笑んだ彼女は、彼に判定を下す。
「ごめんね」
どうやら彼の春も終わり、夏が訪れるようだ。もうじき蝉がやかましく鳴き喚くのだろう。